幻想少女の探偵作法
東方ミステリ合同誌
概要
総勢16名の作者による、A5版サイズ648頁でお送りするミステリ合同。凄い! と言いたいところではあるけれど、個人誌でも500頁超えが珍しくない昨今であるからして、うん、まあ、余裕で薄い本の範疇であるよ。
「幻想郷を舞台としたミステリ」という難解なテーマに、公募で集まっていただいた執筆陣に存分に腕を振るっていただき、読み応えのある本となりました。
ミステリ好きなあなたも、東方世界感好きなあなたも、本書を手に取っていただければきっとお気に入りの一話を見つけられることでしょう。見つけられなかったらあれだ、頭をかいて誤魔化すさぁ。
SS15作+漫画一作。表紙絵は天麩羅ショコラ安定のゆぬきうたさん。各員が織り成す疑惑に満ちた世界の概要を以下、軽く覗いてみて下さいな。
贋作『全て妖怪の仕業なのか』第二話「行者の密室」
浅木原忍 : (Rhythm Five)
「ある状況に対して謎が存在するとき、その謎は大別して、二種類に分類することができます。我々がすべきことは、まずそれを見極めることです」
道教の修行場・S廟の地下室で、荒行中の行者が首を切られた死体となって発見された。
現場には首も凶器もなく、唯一の出入口は見張られていた密室状態。この状況下、犯行を為しえるのは壁抜けの能力を持つ邪仙のみ
――だが、その邪仙にもアリバイが成立した。いったい、誰が行者を殺したのか?
名探偵Qの推理が冴える!
インテリぶる魔法少女とハメたい巫女さん
阿吹 : (阿吹屋)
「そもそも博麗霊夢が強姦魔だなんて、初めの前提からおかしいだろう。誰だってそう思う。霊夢はなにもわるくない。現実を思い出せ、霊夢」
博麗霊夢は強姦魔である。博麗神社の巫女となるため、十年ぶりに幻想郷に帰ってきた。かつて博麗霊夢はこの山深き限界集落に住み、そして幻想郷を捨て都会へと高跳びしたのである。幻想郷に戻ってきた後も、博麗霊夢は強姦魔として少女たちを次々と無慈悲なお祓い棒で強姦していった。
そんな中、霧雨魔理沙は幻想郷中を駆け巡り、博麗霊夢による強姦事件をかき乱していく。一体何を望んでいるのか。
山奥の限界集落「幻想郷」で起こった、少女たちの推理と欲望の恋愛模様。
十六夜咲夜殺人事件
アン・シャーリー : (太田ユリ)
「信じられない。信じられない。だって私、ついさっきまで咲夜と喋ってたのよ。悲鳴があがる、その数秒前まで。話してて、ちょっと目を離した隙に、咲夜がバラバラになってたの!」
バナナは見ていた
鍵入たたら : (円七面鳥)
「それではお言葉に甘えて付き合ってもらいましょうか。叙述トリックという異端の詭計と、人間が自らに課した奇妙な枷についてのささやかな講義に」
「いったいどういうことだろう、とお燐は頭を悩ませていた」
――そんな書き出しから始まる原稿用紙を手に、お燐は困惑していた。さとり様いわく、これは犯人当ての問題編というやつらしい。叙述トリックってのが仕掛けられてるんだって。
でもそれっていったいどういうもの? そこでさとりが口を開いた。
「少し付き合ってもらいましょうか。叙述トリックと犯人当てにまつわるささやかな講義に」
ヘッド・ハンティング
がま口
「私の守る里でこれ以上の事件はもちろん、私刑も許すわけにはいかない。さぁ、聞き込みを始めてくれ」
だが巨大勢力の干渉により、人里の自治が揺らぐ。戒厳下の人里で次々と人々を襲う凶刃に、慧音は危険な賭けに出た。
そして姿の見えない犯人の、予想外な犯行動機が明らかになる――
コールドインフェルノ
仮面の男 : (La Mort Rouge)
人間は悪意をもって様々な残酷をなすが、正しさは時に悪意よりも残酷となる。
心の中に粛々と宿るそれは凍てつくように冷たく、炎よりも激しく全てを灼きつくすのだ。
魔理沙によって博麗神社に持ち込まれた特大の爆弾は霊夢をかつてないほど悩ませることになった。霊夢は人里に生まれた人妖を始末して回る、いわば連続殺人鬼のようなものだが、魔理沙の母親は手にかけていない。だがそれを証し立てる方法がない。
悩む霊夢を宥めすかして半ば強引に探偵役の立場を得たマミゾウは、事件の当事者の一人である森近霖之助を訪ねる。
かつて霧雨の家に何が起きたのか。どうして魔理沙の母親は死ななければならなかったのか。
霖之助は冷たく雪の降りしきる一夜、恐るべき惨劇が起きた日のことを語り始めるのだった。
尖塔月を穿つ
黒猫ルキヤ : (黒猫茶屋)
上白沢慧音には全て分かっていた。
犯人も、凶器も、その動機に至るまでの全てを。
けれど彼女は屈した。この前代未聞な脅迫に―――
幹事として奔走する上白沢慧音だったが不覚にも酔い潰れてしまい、目覚めると花見は終わっていた。
最後まで指揮することが敵わず悔いる慧音であったが、彼女の目に飛び込んできたのは頭から血を流す主催者の姿だった。
捜査の末に「存在するはずのない凶器」の謎に到達した慧音であったが―――
吸血鬼を殺したのは誰?
シミヤ : (~狂堂~)
「あら、おはようレミィ。ようやくお目覚めね? じゃあ、早速ゲームを始めましょう」
「えーと、なんだったかしら......」
「あなたが言ったんじゃない。吸血鬼を殺したのは誰? ゲームよ」
殺される直前の記憶は吹き飛んでいるし、再生した身体に証拠が残るはずもない。かと思えば、容疑者たちはみんながみんな自分がやったと言い出したから、レミリアの頭の中は大混乱!
偽物の証言に騙されず、レミリアは自分を殺した犯人を見つけることが出来るのか?
今はもうおとなし
白衣 : (天麩羅ショコラ)
「いよいよ使うときが来たか......」
「蛮奇さん、時々自己陶酔しているというか、芝居がかった台詞を吐きますわよね」
登場人物を紹介しようッ!
まずは我らが赤蛮奇ッ!! 別段頭が良いわけじゃないから頭数で勝負する迷探偵だッ!
続いてわかさぎ姫ッ!! 目の付け所が魚眼な助手、しかも思考がお姫様なので捜査の役には立たない雑魚だッ!
今泉影狼ッ!! ヘタレお姉さんッ! できることはせいぜい相槌を打つことくらいなダメ狼、だがそれが良いッ!
博麗霊夢!! 我らが博麗の巫女は今回主役じゃないから活躍しないッ!
最後に小兎姫ッ!! 誰だとか言うな、事件大好き幻想郷のお巡りさん、だが何もしないッ!
以上五名がノリと勢いで殺人事件に挑んだりするぞッ!! なお犯人はヤスではない。
首吊りの報酬、或いは不尽なる双子の謎
プラシーボ吹嘘 : (偽薬籠中之月)
見も知らぬ君に幸あれと、口に上(のぼ)せる勇敢さはなかった。せめて心中でのみ祈ることにする。少女の影が翼を広げ、何処かへ跳び去った後の水面には、解(ほぐ)れきった縄の繊維が漂い、緩々と流されてゆくのだった。
変奏曲「本陣殺人事件」
町田一軒家 : (多摩のENDはいつも町田市!)
「誰にも目撃されることなく華麗に密室から脱出した犯人が何故、そのような手間をかけたのか」
鈴蘭畑に吹く風
銘宮 : (風切羽)
「現場が燃える密室だったことを忘れてない?
メディスン以外の誰に被害者を毒殺できたのよ」
工房内に取り残された少女が犠牲となる大惨事だったが、後日、少女の焼死体から猛毒が検出される。
燃え盛る炎の中の少女に、誰がどうやって毒を盛ったのか?
「人間には不可能な服毒」――この状況が、一匹の毒妖怪に疑いの目を向けさせた。
アガサクリスQの事件簿 ~丘の上屋敷の殺人~
めるめるめるめ : (天麩羅ショコラ)
「小鈴にも一緒にきて欲しかったから、私からお願いしたのです。名探偵には助手が付き物ですからね。さながらエルキュール・ポアロとアーサー・ヘイスティングズといったところかしら」
果たしてアガサクリスQは、全ての謎を解き明かすことができるのか?
小兎姫捕物帳・第三幕『妖怪殺し』
aho
「小兎姫さんに言い当てて欲しいです。なぜ私が、彼を殺したのか」
幻想郷の人間の里で、ある妖怪が人間の少女に殺された。少女は妖怪退治屋ではなく、凶器も特別な武器ではない。殺された妖怪自体、悪事を働いたり暴れたりしていたわけではなかった。助手でもある学生と共にこの事件を担当することとなった小兎姫は、犯人の少女から挑戦とも取れる願いを受ける。「なぜ私が彼を殺したのか、言い当てて欲しい」と。
迷い路の魔法使い
S.D.
「普段は考えないようにしているあれこれが質感を伴って思い浮かぶと、無性に不安となる。私は実は死に瀕していて、これは現世から離れようとする自分が見ている、走馬灯のようなものなのではないかと」
見覚えのない建物の中で目覚めた彼女――霧雨魔理沙は、そこからの脱出を試みる。
ここはどこなのか。私は何故こんなところにいるのか。どうすれば抜け出すことができるのか。
戦慄の脱出ミステリ(もどき)。
フロムガリレオ
url : (DST)
「『時計は宇宙を内包しうる』。そう気づいた時計師たちはいまも、時計を宇宙で充たそうとしているのです」
誰が時計の所有者なのか? 何が咲夜をそうさせるのか? 発端は、レミリアと咲夜が出会う前に遡る──。
「時計の所有者は、あなたですね」
時計と宇宙。幻想郷でふたつの針が重なるとき、ついに答えが姿を現す。
幻想ミステリ「フロムガリレオ」堂々開幕。
この話に死者は出ません。